建築ZINE『輪郭をなぞる』| 延岡版
延岡の地形・気候を読み解く
ZINE『輪郭をなぞる 延岡版 ―自然環境を可視化しながら考えた建築のこと―』の一部を紹介。
地域の地形や気候を分析し、建築の手がかりとして読みていく章を抜粋します。
地形と水脈のレイヤー
延岡は「三方山地、一方海」という特徴的な地形をもち、山から海へと流れる五ヶ瀬川や大瀬川が、緩やかな扇状地を形成しています。火山性土壌で自然ろ過された伏流水は、農業や生活を支え、天然のミネラルウォーターともいえる水質を誇ります。
こうした地形や水脈は都市や風景の“見えない構造”です。そして、その湧水や山の縁(へり)には、今山八幡宮や春日神社など、古くから信仰を支える場が築かれ、地域文化の核となってきました。
風 ― どこから吹き、どこに向かうのか
延岡では一年を通じて西風が吹きますが、夏になると風は姿を変えます。昼間は日向灘からの海風が内陸へ、夜は山から冷気が川を伝って下る──そんな局所風がまちの呼吸をつくります。
この現象は「三方山地、一方海」という地形と、山から海へ流れる川筋によって生まれたもの。夕暮れ時、五ヶ瀬川沿いを抜ける冷たい風は、川霧という延岡らしい景観も生み出します。
建築にとって風は、形のない素材。どこで迎え、どこへ逃がすか──その判断が空間の質を決めます。延岡の風は、単なる気象ではなく、地形とともに描かれる“見えない輪郭”なのです。
気温と朝夕の寒暖差
延岡は温暖な気候ですが、夏から秋にかけては日中と夜の寒暖差が大きく、放射冷却による底冷えも見られます。宮崎市と似ていながら、年間を通してやや涼しく、夏の体感も穏やか。一方で東京より冬は過ごしやすいものの、日較差はむしろ大きい月もあります。
この背景には「三方山地、一方海」という地形と、河川による冷却効果があります。だからこそ、熱を蓄えたり逃がしたり、外気を取り込んだり遮断したりと、時間とともに変わる体感に応える柔軟な設計が求められます。延岡の建築は、単純な「暖かい・寒い」ではなく、変化のリズムを読むことから始まります。
光と日射のリズム
延岡は一年を通して日射量が豊かで、冬でもやわらかな光が奥深く届きます。一方で、夏の直射は強烈で、遮蔽の工夫を怠ると空間に熱がこもりやすい地域です。気象データを見ると、宮崎と非常に近い傾向を示し、東京に比べると晴天の安定度が高く、冬場も日射の恩恵を受けやすい点が特徴的です。
商店街にふと現れる神社の石段と鳥居。その背後に広がる緑は、光をやわらかく受け止めながら、まちへ優しい明るさをもたらしています。光は、単なる明るさではなく、時間と熱を伴う素材。方位や地形と対話しながら、そのふるまいを読み解くことが、この土地らしい建築の輪郭を形づくる鍵となります。
雨と湿度、呼吸する建築の必要性
延岡は全国的にも降雨量と湿度が高い地域。特に梅雨から台風期には、湿度は東京より平均10%以上高く、設計における「湿気との向き合い方」が重要になります。
単に湿気を避けるのではなく、風を通す余白や通気性のある構法、調湿性のある自然素材を取り入れた「呼吸する建築」が求められます。
延岡の建築は気候に抗うのではなく、やわらかく適応し、風土と共に呼吸する存在であること。それが、この地らしい建築のあり方です。
風・光・湿度の交点に立つ
人が快適と感じる条件は、気温など単体条件だけでなく、湿度や気流、着衣量や代謝量などが複雑に絡み合って決まります。
それらを複合的に評価できるSET*という指標を用い、人が心地良いと感じる気候が年間にどれだけあるか可視化しました。
延岡と東京を比較すると、延岡では人が快適と感じるSET*20~30℃の範囲に収まる時間が長く、外気を取り入れ、冷暖房なしで過ごせる時間が多いことがわかります。
これは省エネにも直結する重要な条件です。設計において「いつ開けるか」を捉えることが、風土に寄り添い、自然と共生する建築の鍵となります。
紙のZINE(無料配布)
ZINEは、紙の冊子としても無料で配布しています。
地域のカフェや不動産屋、医療施設など、日常の場所で手に取れる存在を目指しています。
店頭で見かけたら、ぜひ気軽にお持ち帰り下さい。建築に関わる方だけでなく、土地のことが好きな方にも届くように編集しています。
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